将棋では、駒を取って得をしていても、自分の玉が危険になると一手で形勢が変わります。囲いを作ったから安心だと思って攻め続けているうちに、飛車や角の利きが玉の近くへ通り、急に受けが難しくなることもあります。
玉の安全を高めるには、囲いの形だけでなく、戦場との距離、守り駒の枚数、逃げ道、相手の持ち駒を続けて見ることが大切です。毎回すべてを深く読むのではなく、確認する順番を決めると初心者でも危険に早く気づけます。
前回の将棋の囲い方では、玉を中央から動かし、金銀を近づける基本を整理しました。今回は、作った囲いを実戦でどう保ち、どのような局面で玉を逃がすべきかを解説します。
玉の安全は囲いの名前だけでは決まらない
美濃囲いや矢倉などの形を作っても、それだけで玉が安全になるわけではありません。同じ囲いでも、相手の攻め駒が遠ければ安全で、飛車角や持ち駒が集まっていれば危険になります。
大切なのは、現在の局面で相手が何手くらいで玉へ迫れるかを見ることです。相手の攻めがまだ遠いなら攻めに一手使えますが、次に王手や駒の打ち込みがあるなら先に備える必要があります。
囲いは玉を守る土台です。完成形を保つことより、相手の攻めに合わせて補強したり、玉を逃がしたりする方が重要な場面もあります。
玉の危険度を見る5つのポイント
自分の玉が安全か迷ったら、次の5点を順番に確認します。
- 相手の飛車角の利き – 玉や囲いに大駒の利きが通っていないか。
- 玉の近くの攻め駒 – 相手の駒が何枚集まっているか。
- 自分の守り駒 – 金銀が離れたり、取られそうになったりしていないか。
- 玉の逃げ道 – 王手を受けたときに移動できるマスがあるか。
- 相手の持ち駒 – 金、銀、桂、香、歩を玉の近くへ打たれる余地がないか。
この5点のうち二つ以上に不安があるなら、攻めを続ける前に一度守りを考える目安になります。形勢全体を見る方法は将棋の形勢判断の基本でも整理しています。
戦場から玉を遠ざける
玉の安全を高める最も分かりやすい方法は、戦いが起きる場所から玉を遠ざけることです。飛車を使って右側で攻めるなら玉を左側へ囲うなど、攻める場所と守る場所を分けると、相手の反撃に巻き込まれにくくなります。
ただし、序盤に決めた戦場が途中で変わることもあります。相手が端から攻めてきた、角を転回して玉側を狙ってきたという場合は、最初の囲いがそのまま安全とは限りません。
「囲いができたか」だけでなく、「いま戦いが起きている場所と玉は近くないか」を見直しましょう。中盤の攻めと受けの切り替えは将棋の中盤の考え方も参考になります。
守り駒の数と働きを確認する
玉の近くに金銀が並んでいても、相手の駒に狙われて動けない、ほかの駒に遮られて利きが届かないという場合があります。枚数だけでなく、それぞれの駒が守りたいマスに利いているかを見ることが大切です。
初心者は攻めに夢中になると、囲いの金銀まで前へ出してしまいがちです。守り駒を攻めに使うときは、その駒がいなくなったあとに相手の飛車角が通らないか、玉頭や端が薄くならないかを確認します。
一方で、金銀を玉の周りへ集めすぎると、玉が動けなくなることもあります。守り駒は多ければよいのではなく、玉を守りながら逃げ道も残せる配置が理想です。
逃げ道は王手をかけられる前に作る
王手をかけられてから逃げ道を探すと、相手の駒が利いていて動けないことがあります。安全なうちに、玉が横や後ろへ移動できるマスを一つ確保しておくと、攻められたときの選択肢が増えます。
逃げ道を作る手は、すぐに駒を取る手ほど目立ちません。しかし、将来の王手をかわしやすくし、相手の攻めにもう一手必要とさせる効果があります。
確認するときは、空いているマスを見るだけでは不十分です。そのマスに相手の飛車、角、桂馬などが利いていないか、移動したあとに別の王手が続かないかも見ましょう。
相手の持ち駒で危険度は変わる
盤上の駒だけを見ていると、持ち駒を打たれて急に囲いを崩されることがあります。特に金や銀は玉の近くへ打たれると王手や詰めろになりやすく、桂馬は離れた位置から玉を狙えます。
玉の周りに駒を打てる空間が多いときは、相手の持ち駒を必ず確認しましょう。歩しか持っていない場合と、金銀を複数持っている場合では、同じ盤面でも危険度が大きく違います。
相手の次の狙いを考える習慣は、将棋で相手の狙いを読む方法で紹介している確認手順ともつながります。
攻める前に相手の王手を1回確認する
自分に良い攻めが見えたときほど、すぐ指さずに相手の王手を確認します。「自分がこの手を指したあと、相手にどんな王手があるか」と一度考えるだけでも、見落としを減らせます。
相手の王手が一回で終わるなら攻めを選べる場合がありますが、王手が何度も続くなら自分の攻めが間に合わないかもしれません。王手の連続で玉を危険な方向へ追われないかも重要です。
攻め合いでは、駒得より玉の安全を優先すべき局面があります。自分の玉が詰めろなら、相手の駒を取る手より詰みを防ぐ手を先に考えます。
玉が危なくなったときの対処順
危険に気づいたら、あわてて守り駒を足す前に、次の順番で候補手を探すと整理しやすくなります。
- 相手の攻め駒を取れるか – 攻めの中心を減らせれば最も分かりやすい。
- 飛車角の利きを止められるか – 歩や持ち駒を使って直通を遮る。
- 玉を安全な方へ逃がせるか – 囲いにこだわらず戦場から離れる。
- 守り駒を足せるか – 金銀を寄せ、相手の打ち込みを防ぐ。
- 相手玉へ迫って手番を握れるか – 守りが間に合わない場合のみ反撃を検討する。
受けの候補を比べる方法は将棋の受け方で詳しく解説しています。囲いを元の形へ戻すことより、相手の攻めを一度止めることを優先しましょう。
序盤・中盤・終盤で見る点を変える
序盤は最低限の囲いと大駒の利き
序盤は、居玉を避けて金銀を近づけ、相手の角筋が玉へ通っていないかを確認します。完璧な囲いを待ちすぎず、相手の仕掛けに間に合う範囲で安全を整えます。
中盤は戦場との距離と守り駒
中盤では駒がぶつかり、囲いの一部が交換されます。どちら側で戦いが起きているか、守りの金銀を攻めに使いすぎていないかを毎手見直します。
終盤は詰みと詰めろを優先する
終盤では囲いの形より、具体的に詰むかどうかが重要です。逃げ道、相手の持ち駒、連続王手を確認し、自玉に詰めろがかかっているなら先に受けます。終盤の判断は将棋の終盤の考え方も参考にしてください。
対局中に使える10秒チェック
長く考えられないときは、指す前に次の短いチェックを使います。
- 相手にすぐできる王手はあるか。
- 相手の飛車角は自玉を見ているか。
- 玉の近くは攻め駒より守り駒が少なくないか。
- 安全な逃げ道が一つ以上あるか。
- 自分の一手で守り駒や逃げ道が消えないか。
毎手完璧に読めなくても、この確認を続けると危険な局面で立ち止まりやすくなります。特に、自分が駒を取る前と攻め駒を前進させる前に行うと効果的です。
対局後は玉が危険になった最初の局面を見る
負けた将棋を振り返るとき、最後の詰みだけを見ても改善点が分からないことがあります。詰む数手前ではなく、相手の攻め駒が玉側へ集まり始めた局面や、守り駒を攻めに使った局面まで戻りましょう。
「囲いを完成できたか」「逃げ道はあったか」「どの手で戦場が玉へ近づいたか」の三点をメモすると、次の対局で同じ危険に気づきやすくなります。
毎回一局だけでも振り返れば十分です。対局と復習の組み合わせ方は初心者から中級者までの将棋勉強法も参考になります。
よくある質問
囲いを完成させれば玉は安全ですか?
囲いは安全を高めますが、完成後も相手の攻め駒や持ち駒によって危険度は変わります。囲いの名前や形だけで判断せず、戦場との距離と逃げ道を確認しましょう。
玉の逃げ道はいくつ必要ですか?
まずは安全に移動できるマスを一つ確保する意識で構いません。ただし、そのマスに相手の駒が利いていないか、逃げたあとも王手が続かないかを見る必要があります。
守り駒を攻めに使ってはいけませんか?
使ってはいけないわけではありません。守り駒を動かしたあとに、相手の大駒の利きが通る、玉頭が薄くなる、逃げ道がなくなる場合は慎重に判断します。
自玉と相手玉のどちらが危険か分かりません
両方の玉について、すぐできる王手、近くの攻め駒、守り駒、持ち駒、逃げ道を同じ順番で比べます。終盤では、自玉に詰みや詰めろがあるかを先に確認してください。
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- 将棋の終盤の考え方 – 詰み、詰めろ、受けの優先順位を整理できます。
まとめ
将棋で玉の安全を高めるには、囲いを作るだけでなく、相手の飛車角、近くの攻め駒、自分の守り駒、逃げ道、相手の持ち駒を続けて確認することが大切です。戦場が玉へ近づいたら、囲いの形にこだわらず、攻め駒を取る、利きを止める、玉を逃がすといった方法を比べましょう。
まずは指す前に「相手の王手はあるか」「逃げ道はあるか」の二つを見るだけでも構いません。短い確認を毎局続けると、危険になる前に守る手を選びやすくなります。

