将棋を指していると、「今は自分が良いのか、悪いのか」が分からなくなる場面があります。駒を取ったから有利に見えるのに攻められて苦しくなったり、玉が安全そうなのに一気に寄せられたりすることもあります。
形勢判断は、感覚だけで決めるものではありません。駒得、玉の安全、駒の働き、手番、相手の狙いを順番に見ると、初心者でも局面を整理しやすくなります。
この記事では、将棋初心者が形勢判断で迷わないための基本をまとめます。序盤・中盤・終盤の流れをつかみたい場合は、先に将棋の中盤の考え方や将棋の終盤の考え方を読んでおくと理解しやすくなります。
形勢判断は「どちらが勝ちやすいか」を見る作業
形勢判断とは、今の局面でどちらが勝ちやすいかを考えることです。単に駒を多く持っているかだけでなく、玉が安全か、攻めが続くか、次に厳しい手を指せるかまで含めて判断します。
初心者のうちは、形勢を細かく点数化する必要はありません。まずは「少し良い」「互角」「少し苦しい」くらいに分けられれば十分です。大切なのは、良いと思った理由や悪いと思った理由を言葉にすることです。
たとえば「銀を一枚得しているから良い」だけでは不十分です。「銀を得しているが、自玉が薄く、相手に攻めの手番がある」と考えられれば、局面をより正確に見られます。
最初に駒の損得を見る
形勢判断で最初に分かりやすいのは、駒の損得です。相手より多く駒を持っているか、大きな駒を取っているかを見ると、局面の土台をつかみやすくなります。
駒の価値は、ざっくり次のように考えると十分です。
- 飛車と角は大きな駒。
- 金と銀は守りにも攻めにも使いやすい駒。
- 桂馬と香車は使える場所が限られるが、急所では強い駒。
- 歩は小さい駒だが、持ち歩があると攻めや受けの幅が広がる。
ただし、駒得だけで有利とは限りません。飛車を取っていても自玉が詰めろなら苦しいですし、歩一枚の差でも相手玉に厳しい攻めがあれば有利なことがあります。駒得は形勢判断の入り口であって、結論ではありません。
次に玉の安全を見る
駒の損得を見たら、次に玉の安全を確認します。将棋は相手玉を詰ませるゲームなので、どれだけ駒得していても自分の玉が危なければ勝ちにくくなります。
玉の安全を見るときは、次の点を確認します。
- 玉の周りに金銀が残っているか。
- 逃げ道があるか。
- 相手の飛車、角、桂馬が玉の近くを狙っていないか。
- 相手の持ち駒で王手が続きそうか。
初心者は、攻めているときほど自玉を見落としやすくなります。攻めが続くかどうかを考える前に、自分の玉が急に詰まないか、相手に詰めろをかけられていないかを確認しましょう。
駒の働きを見る
同じ駒でも、働いている駒と働いていない駒では価値が変わります。盤上にある駒が攻めや守りに参加しているかを見ることも、形勢判断では大切です。
働いている駒とは、相手玉に迫っている駒、重要なマスを守っている駒、次の狙いを持っている駒です。反対に、盤の端で使いにくい駒や、自分の駒で動きをふさがれている駒は働きが弱い駒です。
たとえば、飛車を持っていても打つ場所がなければすぐには働きません。逆に、銀一枚でも相手玉の近くで逃げ道をふさいでいれば非常に大きな働きをしています。駒の価値は、種類だけでなく場所によって変わると考えましょう。
手番と次の狙いを見る
形勢判断では、どちらの手番かも重要です。互角に見える局面でも、次に厳しい手を指せる側が有利になることがあります。
手番を見るときは、「次に何を狙えるか」を考えます。相手玉に詰めろをかけられるのか、大きな駒を取れるのか、守り駒をはがせるのか。反対に、相手の手番なら相手が何を狙っているかを見る必要があります。
相手の狙いを読む練習は、将棋で相手の狙いを読むには?でも整理しています。形勢判断が苦手な人は、自分の良い手だけでなく、相手の次の一手を一つ見る習慣をつけると判断が安定します。
攻めが続くかを見る
駒得していても、攻めが切れてしまうと形勢は悪くなります。特に中盤から終盤では、攻めが続くかどうかが大きな判断材料になります。
攻めが続くかを見るには、持ち駒と盤上の攻め駒を確認します。次に王手があるか、守り駒を取れるか、歩を打って攻めをつなげるか。これらが見えれば、多少駒を渡しても攻め合いに勝てることがあります。
反対に、攻め駒が少なく、相手玉が広く、持ち駒も足りない場合は、無理に攻めるより一度駒をためる方がよいことがあります。中盤の攻め方は将棋の中盤の考え方、終盤の寄せは将棋の終盤の考え方も参考になります。
受けが間に合うかを見る
形勢が悪そうに見えても、しっかり受けられるならまだ戦えます。逆に、有利そうでも相手の攻めを止められなければ危険です。
受けが間に合うかを見るときは、相手の一番厳しい狙いを考えます。王手が続くのか、詰めろをかけられるのか、大事な守り駒を取られるのか。その狙いに対して、金銀を打つ、玉を逃げる、攻め駒を取るといった受けがあるかを確認します。
良い受けは、ただ守るだけではありません。相手の攻め駒を取りながら持ち駒を増やす、玉を安全な場所へ逃がしながら次の攻めを残すなど、反撃につながる受けを選べると形勢は大きく変わります。
初心者向けの形勢判断チェックリスト
実戦中にすべてを深く読むのは難しいので、まずは次の順番で確認するとよいでしょう。
- 駒の損得 – 大きな駒を取っているか、持ち駒に差があるか。
- 玉の安全 – 自玉と相手玉のどちらが危ないか。
- 駒の働き – 攻めや守りに参加している駒が多いか。
- 手番 – 次に厳しい手を指せるのはどちらか。
- 攻めと受け – 攻めが続くか、相手の攻めを受けられるか。
この5つを毎回完璧に見る必要はありません。対局後に一つずつ振り返るだけでも、形勢判断の精度は少しずつ上がっていきます。
形勢判断でよくある失敗
形勢判断でよくある失敗は、ひとつの要素だけで有利・不利を決めてしまうことです。次のような見方には注意しましょう。
- 駒得だけで有利だと思い、自玉の危険を見ない。
- 王手があるだけで攻めが成功していると思う。
- 相手の攻め駒が少ないのに、怖がって受けすぎる。
- 持ち駒が多いのに、打つ場所がなくて働いていない。
- 相手の次の狙いを見ず、自分の手だけを考える。
形勢判断は、正解を一瞬で当てる練習ではありません。複数の材料を比べて、今の局面で一番大事なものを選ぶ練習です。
AI評価値との付き合い方
将棋アプリや将棋ソフトでは、評価値で形勢を確認できることがあります。評価値は便利ですが、初心者のうちは数字だけを見るより、なぜその数字になっているのかを考える方が勉強になります。
たとえば評価値が良い場合でも、駒得しているから良いのか、玉が安全だから良いのか、相手の攻めが切れているから良いのかを確認しましょう。評価値が悪い場合も、どの駒が働いていないのか、どこが危ないのかを探すと学びになります。
AIや評価値の基本は将棋エンジンとは?評価値の読み方で詳しくまとめています。評価値は答え合わせとして使い、自分で判断した理由と比べるのがおすすめです。
1週間の形勢判断練習メニュー
形勢判断は、実戦後の短い振り返りで伸ばしやすい分野です。毎日ひとつの局面だけでも、理由を言葉にする練習を続けると見方が安定します。
- 1日目 – 対局後に「駒得しているか」だけを確認する。
- 2日目 – 自玉と相手玉の安全度を比べる。
- 3日目 – 働いていない駒を一つ探す。
- 4日目 – 次に厳しい手を指せるのはどちらかを考える。
- 5日目 – 攻めが続くか、受けが間に合うかを確認する。
- 6日目 – AI評価値を見て、自分の判断と比べる。
- 7日目 – 一番見落としが多かった項目を次週の課題にする。
将棋全体の勉強順を整理したい場合は、将棋勉強法は何から始める?や将棋中級者が上達しない理由も合わせて読むと、形勢判断をどこで練習すればよいかが分かりやすくなります。
よくある質問
初心者は評価値を見た方がよいですか?
答え合わせとして見るのは有効です。ただし、対局中の判断力を伸ばしたいなら、先に自分で「駒得、玉の安全、手番」の理由を考えてから評価値を見る方が勉強になります。
駒得しているのに負けるのはなぜですか?
駒得していても、玉が危ない、攻めが切れている、駒が働いていない場合は負けることがあります。終盤では駒の枚数より、玉の近くで働いているかが重要になる場面も多いです。
形勢判断は何手先まで読めばよいですか?
初心者のうちは、深く読むより「相手の次の一手」と「自分の次の狙い」を見るだけでも十分です。慣れてきたら、攻めが続くか、受けが間に合うかを2手から3手先まで確認しましょう。
形勢が悪いときはどう指せばよいですか?
すぐに諦めず、相手玉への嫌味、持ち駒を増やす手、自玉を安全にする手を探します。相手に一手でも正確な受けを要求できれば、逆転の可能性が残ることがあります。
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まとめ
将棋の形勢判断は、駒得だけで決めるものではありません。駒の損得、玉の安全、駒の働き、手番、攻めと受けのバランスを順番に見ることで、局面を落ち着いて整理できます。
初心者のうちは、細かい評価値を当てる必要はありません。「なぜ良いと思ったのか」「どこが危ないのか」を言葉にするだけで、対局後の振り返りが大きく変わります。毎局ひとつだけでも形勢判断の理由を確認し、少しずつ見る材料を増やしていきましょう。
