将棋の勉強をしていると、「手筋を覚えましょう」とよく言われます。けれども、ただ名前だけを暗記しても、実戦でどこに使えばよいのか分からないことがあります。
手筋は、局面を良くするための小さな型です。駒を取るための手筋、攻めをつなげる手筋、受けを強くする手筋など、目的とセットで覚えると実戦で使いやすくなります。
この記事では、将棋初心者が手筋を丸暗記で終わらせず、対局中に思い出せる形にする覚え方をまとめます。局面の見方に不安がある場合は、先に将棋の形勢判断の基本や将棋の中盤の考え方を読んでおくとつながりやすくなります。
手筋は「よく出る良い手の形」
将棋の手筋とは、実戦で何度も現れる有効な手の形です。特定の局面だけで使える暗記手順ではなく、「こういう形ならこの駒が働きやすい」という考え方に近いものです。
たとえば、歩を打って相手の形を乱す、桂馬で両取りを狙う、銀を打って飛車と金を同時に狙う、といった手は典型的な手筋です。名前を知っているだけでも便利ですが、それ以上に大切なのは、何を狙った手なのかを理解することです。
初心者のうちは、難しい手筋を大量に覚える必要はありません。まずは、攻め、受け、駒得、寄せに関係する基本的な形を少しずつ身につける方が実戦で役立ちます。
手筋を覚えても実戦で出ない理由
手筋を勉強しているのに実戦で使えない場合、原因は暗記量ではなく覚え方にあることが多いです。よくある失敗は、手筋の名前だけを覚えて、使う条件を見ていないことです。
たとえば「ふんどしの桂」を知っていても、相手の玉や飛車、金銀が桂馬の利きに並んでいなければ使えません。「垂れ歩」を知っていても、次にと金を作れる場所や相手が受けにくい場所を見ていなければ効果は薄くなります。
手筋は、名前、形、狙い、使う前提をセットで覚える必要があります。問題集で正解したあとも、「なぜこの場所に打つのか」「相手は何に困るのか」まで言葉にしておくと、実戦で思い出しやすくなります。
まず覚えたい基本手筋
最初に覚える手筋は、実戦で出やすく、狙いが分かりやすいものからで十分です。次のように目的別に分けると整理しやすくなります。
- 駒得の手筋 – ふんどしの桂、割り打ちの銀、両取り。
- 攻めをつなぐ手筋 – 垂れ歩、たたきの歩、継ぎ歩。
- 守りを崩す手筋 – 守り駒をはがす手、逃げ道をふさぐ手。
- 受けの手筋 – 金底の歩、合駒、攻め駒を取る受け。
- 終盤の手筋 – 詰めろ、必至、逃げ道封鎖。
これらを全部一度に覚えるより、今の自分がよく困る場面から選ぶ方が続きます。攻めが続かない人は歩の手筋、駒損が多い人は両取り、終盤で逆転される人は詰めろと受けの手筋から始めるとよいでしょう。
名前より「目的」で覚える
手筋を覚えるときは、名前から入るより目的から入る方が実戦向きです。「垂れ歩」という名前を覚えるだけではなく、「次にと金を作って相手の守りを削る手」と覚えます。
同じように、「ふんどしの桂」は「桂馬で二つの大きな駒を同時に狙う手」、「金底の歩」は「金の下に歩を打って守りを固くする手」と言い換えられます。目的を言えるようになると、似た局面で候補手として浮かびやすくなります。
実戦では、手筋の名前を思い出す時間はあまりありません。「相手の守りを崩したい」「攻めを切らしたくない」「自玉を一手安全にしたい」という目的から、使えそうな形を探す練習が大切です。
1つの手筋を3局面で見る
手筋は、ひとつの例だけで覚えると応用しにくくなります。同じ手筋を3つくらいの違う局面で見ると、「どこが同じで、どこが違うのか」が分かりやすくなります。
たとえば垂れ歩なら、飛車先で使う形、玉の近くで使う形、守り駒の後ろに使う形を比べます。すべての局面で共通しているのは、すぐに取られにくく、次にと金を作る狙いがあることです。
問題集やアプリで手筋を解いたら、正解を見て終わりにせず、「この手はどの目的で使われたのか」を一言メモしましょう。自分の言葉で残すだけでも、記憶が実戦に近づきます。
定跡と手筋を分けて考える
定跡は序盤の進め方、手筋は局面を良くする型です。定跡を覚えている途中でも、手筋を知らないと中盤で手が止まりやすくなります。反対に、手筋だけを覚えても序盤の形が悪ければ使う前に苦しくなることがあります。
定跡を勉強するときは、「この手順を覚える」だけでなく、「この形になったらどんな手筋が出やすいか」を見ると効果が上がります。定跡の覚え方は将棋の定跡の勉強法で整理しています。
戦法ごとの狙いを知りたい場合は、将棋初心者におすすめの戦法も参考になります。戦法の狙いと手筋の目的がつながると、ただ指すだけの定跡暗記から抜け出しやすくなります。
実戦で手筋を使うための探し方
対局中に手筋を探すときは、いきなり正解を当てようとしなくて大丈夫です。まずは局面の目的を決めます。
- 攻めたいのか、受けたいのかを決める。
- 相手の弱い場所を探す。
- 自分の持ち駒で働きそうな駒を見る。
- 歩、桂、銀の手筋がないか確認する。
- 指したあとに相手の一番厳しい応手を考える。
この順番にすると、手筋を無理に探すのではなく、局面に合う候補手として見つけやすくなります。相手の狙いを先に見る練習は、将棋で相手の狙いを読むには?にもつながります。
手筋ノートを作るなら短く書く
手筋をノートにまとめる場合、長い解説を書き写す必要はありません。むしろ短く、自分が実戦で思い出せる形にする方が役立ちます。
おすすめは、次の4項目だけを書く方法です。
- 手筋の名前。
- 何を狙う手か。
- 使える条件。
- 失敗しやすい形。
たとえば「垂れ歩」であれば、「次にと金を作る」「すぐ取られにくい場所」「相手が受けにくい場所」「攻め駒が足りないと遅い」といった具合です。これくらい短い方が、対局後に見返しやすくなります。
手筋問題は量より復習が大切
手筋問題は、たくさん解くことも大切ですが、間違えた問題を復習する方が効果が出やすいです。正解できなかった問題には、自分が見落とした理由があります。
歩の手筋を見落としたのか、桂馬の利きに気づかなかったのか、相手の受けを読んでいなかったのか。間違えた理由をひとつだけ書いておくと、次に同じ形が出たときに気づきやすくなります。
終盤の手筋を増やしたい場合は、短い詰将棋も役立ちます。詰将棋の考え方は詰将棋で鍛える終盤力、本の選び方は詰将棋本おすすめでまとめています。
1週間の手筋練習メニュー
手筋は毎日少しずつ触れる方が定着します。最初は難しい問題を長時間解くより、基本手筋を短く繰り返す方が実戦に出やすくなります。
- 1日目 – 歩の手筋を5問解き、狙いを一言で書く。
- 2日目 – 桂馬の両取りを5問解き、どの駒を狙ったか確認する。
- 3日目 – 銀や金を使う攻めの手筋を5問解く。
- 4日目 – 受けの手筋を3問だけ解き、守ったあとに何が残るかを見る。
- 5日目 – 実戦後に、使えそうだった手筋を1つ探す。
- 6日目 – 間違えた問題だけを解き直す。
- 7日目 – 一番使いたい手筋を1つ選び、次の対局で探す。
将棋全体の勉強配分を決めたい場合は、将棋勉強法は何から始める?や将棋中級者が上達しない理由も合わせて読むと、手筋練習をどこに入れるか決めやすくなります。
よくある質問
手筋は何個くらい覚えればよいですか?
初心者のうちは、数を増やすより基本の10個前後を実戦で思い出せるようにする方が大切です。歩、桂、銀、受け、終盤の基本手筋から少しずつ増やしましょう。
手筋の名前を覚える必要はありますか?
名前を覚えると本や動画で学びやすくなりますが、名前だけでは不十分です。「何を狙う手か」「どんな形で使えるか」をセットで覚えましょう。
手筋問題と実戦はどちらを優先すべきですか?
両方必要です。手筋問題で形を覚え、実戦後にその形が使えたかを振り返ると定着しやすくなります。問題だけ、実戦だけに偏らない方が効果的です。
攻めの手筋ばかり覚えてもよいですか?
最初は攻めの手筋からでも構いません。ただし、終盤で逆転されやすい人は受けの手筋も必要です。攻めを続けるためにも、自玉を一手安全にする受けを覚えておきましょう。
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- 将棋の形勢判断の基本 – 手筋を使う前に、局面の良し悪しを整理したい人向けです。
- 将棋の中盤の考え方 – 攻め・受けの方針から手筋を探したい人向けです。
- 将棋の定跡の勉強法 – 定跡暗記と手筋の使い分けを整理したい人向けです。
- 将棋の終盤の考え方 – 終盤の詰めろや寄せの手筋を実戦につなげたい人向けです。
- 将棋勉強法は何から始める? – 手筋練習を日々の勉強に組み込みたい人向けです。
まとめ
将棋の手筋は、名前を丸暗記するだけでは実戦で使いにくいものです。名前、形、狙い、使える条件をセットで覚えると、対局中に候補手として思い出しやすくなります。
最初は歩、桂、銀、受け、終盤の基本手筋から始めましょう。問題を解いたら正解だけで終わらせず、何を狙った手なのかを一言で説明します。短い復習と実戦後の振り返りを続ければ、手筋は知識ではなく実際に使える武器になっていきます。
