将棋ソフトは強力なトレーニングパートナーであり、初心者の入門から上級者の研究まで幅広く活用できます。しかし、数多くの選択肢から自分に合ったソフトを見つけるのは簡単ではありません。この記事では、あなたの棋力や目的に合わせた将棋ソフトの選び方をわかりやすく解説します。プラットフォーム別の特徴や機能の違いを理解して、理想的な将棋ソフトを見つけましょう。
将棋ソフト選びの基本的な考え方
将棋ソフトを選ぶ際は、自分の棋力と目的を明確にすることから始めましょう。強さだけでなく、使いやすさや学習機能も重要な選択基準となります。
将棋ソフトを選ぶ際にまず考慮すべきは、自分の棋力と目的です。初心者ならルールを学べる機能が重要ですし、上級者なら詳細な解析機能が必要になるでしょう。また、使用するプラットフォームによっても最適なソフトは変わります。PCソフトは高機能ですが、スマホアプリは手軽に使えるという特徴があります。
無料ソフトと有料ソフトの違いも押さえておきましょう。無料の将棋エンジンは近年非常に強力で、プロレベルのものも数多くあります。一方、有料ソフトはインターフェースの使いやすさや学習サポート機能が充実している傾向があります。
どのソフトにも共通して求めたい基本機能としては、「適切な難易度調整」「棋譜の保存・読み込み」「形勢判断の表示」「定跡データの搭載」などが挙げられます。これらは将棋を楽しみ、上達する上で欠かせない要素です。
初心者向け将棋ソフトの選び方
将棋を始めたばかりの方には、わかりやすい解説機能と段階的な難易度設定を備えたソフトがおすすめです。楽しみながら基礎を身につけられるものを選びましょう。
初心者が将棋ソフトに求める一番のポイントは、ルールや基本戦術を丁寧に教えてくれることです。駒の動きやルールを解説する入門モードがあるソフトは心強い味方になります。例えば「銀星将棋DX」シリーズでは、将棋の基本から学べる講座や、対局中に駒の利きを表示してくれる機能が搭載されています。
また、対局中に現在指している戦法や囲いの名前を画面に表示してくれるアプリもあります。「将棋ウォーズ」などでは、対局中に「矢倉」「美濃囲い」など戦法名が表示されるため、遊んでいるうちに自然と戦法を覚えられます。
初心者は最初、コンピュータが強すぎると挫折してしまう恐れがあります。そこで、段階的にAIの強さを調整できるソフトを選ぶことが大切です。「ぴよ将棋」では、レベルが1(15級程度)から40(アマチュア六段程度)まで細かく設定できるので、自分の成長に合わせて難易度を上げていくことができます。
基本的な手筋や戦法を学べる教育的機能も初心者には重要です。詰将棋や次の一手問題を解けるモードがあると、ゲーム感覚で知識を身につけられます。銀星将棋DXには3手詰や5手詰の問題が多数収録されており、クリアするとご褒美画像が現れる「詰将棋バトル」というゲーム要素のあるモードも用意されています。
初心者が挫折しないためには、勝ちやすい環境とモチベーション維持が重要です。持ち時間を長めに設定できるソフトや、「待った」「ヒント」機能があると安心です。このように初心者に優しい機能が充実したソフトを選ぶことで、将棋の面白さを実感しながら徐々に実力を伸ばすことができるでしょう。
中級者の上達を支援するソフト選び
ルールや基本戦術を身につけた中級者には、棋譜解析機能や実戦的な対局環境を提供するソフトがおすすめです。自分の弱点を見つけ、効率的に実力を伸ばせる機能に注目しましょう。
中級者にとって、対局後の棋譜解析は上達の鍵となります。自分の指した将棋をエンジンで検討し、どの局面で悪手だったのか、最善手は何だったのかを知ることで弱点克服につながります。対局後にAIが自動で形勢グラフや勝敗の分岐点を示してくれるソフトを選ぶと良いでしょう。
例えば「将棋ウォーズ」では対局終了後に勝率の推移グラフが表示され、自分がどのあたりで優勢になり、どこで逆転されたかが一目でわかります。PCソフトの「検討モード」ではエンジンの読み筋や評価値を表示しながら、好きな局面まで巻き戻して検討できる機能が便利です。
中級者になると実戦的な対局相手も重要になります。自分より少し強い相手と指すことで経験を積み、腕を磨くことができます。多くのソフトではレベルを細かく設定可能なので、自分の段級位と同程度かやや上くらいに調節するとよいでしょう。例えばK-Shogiという無料PCソフトは40段階のレベルがあり、初心者からアマ五段程度まで対応できます。
さらに、中級者が壁に当たりやすい序盤戦術(定跡)の理解不足を補うために、定跡学習に役立つ機能を持つソフトも活用しましょう。「世界最強銀星将棋」シリーズでは数百万手に及ぶ定跡が収録されており、対局中に定跡手順から外れると知らせてくれる機能があります。
中級者から上級者を目指す段階では、自分の将棋の中で特に弱い部分を分析・補強することが重要です。「激指」シリーズではレーティング対局の後に「定跡力」「終盤力」など項目別に評価が表示されるので、自分の弱点を客観的に把握できます。弱点がわかったら、それぞれに対応する訓練機能(詰将棋モード、定跡問題など)を活用して克服していきましょう。
上級者・有段者のためのソフト選択
有段者やアマ高段者には、高度な研究パートナーとしての役割を果たすソフトが必要です。トッププロレベルの思考エンジンや詳細な解析機能を備えたソフトを選びましょう。
上級者にとってコンピュータ将棋はもはや「先生」とも言える存在です。プロ公式戦でもAI研究が当たり前になった今、トッププロレベルの思考エンジンを使える将棋ソフトは欠かせません。「水匠」「やねうら王」「Elmo」「Ponanza」など、タイトル戦で名人に勝利した実績を持つエンジンが搭載されたソフトを選ぶとよいでしょう。
上級者がエンジンの力を引き出すには、ソフト側のUIがそれに応えてくれる必要があります。特に詳細な評価値と読み筋の表示機能は重要です。評価値とは、エンジンが判断した局面の有利不利を数値化したもので、上級者ならばその変化に敏感に反応し、自分の指し手の良し悪しを客観視できます。
ShogiGUIやShogiHomeでは、エンジンの読み筋を常に更新表示しつつ、ユーザーが枝分かれを辿っていくとその先の読みも再計算して表示してくれます。こうした詳細な情報があれば、人間では発見しにくい巧妙な手順や問題点を把握でき、より深い研究が可能になります。
現代の将棋研究において、定跡データベースの活用は上級者ほど重要性が増します。プロの公式戦や過去の名局、コンピュータ同士の対戦棋譜などを大量に蓄積したデータベースを参照することで、最新の戦型トレンドや新手の発見につながります。
上級者向けソフトとしては、複数のエンジンを同時活用できる機能も役立ちます。将棋所やShogiGUIではUSIプロトコル対応エンジンを複数登録できるため、水匠とdl将棋など性質の異なるエンジンで同一局面を検討し、意見を比較することも可能です。
通信対局の機能やカスタム局面設定機能も研究に役立ちます。特定の局面からAIと対局したり解析したりすることで、局面ごとの最善手順を集中的に研究できます。上級者はこうした高度な機能を活用し、AIと協力しながら将棋の理解を深めていくことが大切です。
各プラットフォーム別おすすめソフト
将棋ソフトは様々なプラットフォームで提供されています。PCからスマホ、専用機まで、それぞれの特徴を押さえて自分の環境に合ったソフトを選びましょう。
Windows/Mac向け本格派ソフト
パソコン向けの将棋ソフトには、伝統ある商用ソフトから最新のフリーソフトまで多彩な選択肢があります。
「激指」シリーズは市販の定番ソフトで、プロ棋士並みの強さと豊富な学習モードが魅力です。30段階の難易度設定や棋譜解析、詰将棋・次の一手問題集など機能が充実しています。
「金沢将棋」は100段階の細かなレベル設定が特徴で、初心者から有段者まで幅広く対応しています。グラフィックが3D表示にも対応しており、視覚的な楽しさも味わえます。
無料ソフトでは「K-Shogi」が強力なAIエンジンを搭載しており、40段階のレベル調整や棋譜保存・検討機能も備えています。コストをかけずにPCで将棋を楽しみたい方におすすめです。
上級者には「ShogiGUI」や「将棋所」といった無料の対局GUIに、「やねうら王」や「水匠」などの強豪エンジンを組み合わせる方法も人気です。自分好みにカスタマイズできる柔軟性が魅力です。
MacやLinuxユーザーには「ShogiHome」というオープンソースの将棋アプリがおすすめです。Electron製でマルチプラットフォーム対応しており、非Windowsでも強豪AIを動かせます。
スマートフォン/タブレット向けアプリ
スマホやタブレットで遊べる将棋アプリには、初心者向けから上級者向けまで多種多様なものがあります。
「ぴよ将棋」は無料で利用でき、初心者から有段者まで人気の定番アプリです。可愛いヒヨコのAIと対局でき、レベルは40段階と幅広く設定できます。入門講座・詰将棋・棋譜解析など機能も充実しています。
「将棋ウォーズ」は日本将棋連盟公認のオンライン対局アプリで、全国のプレイヤーとリアルタイムで対局できます。切れ負けルールの早指し戦が中心で、対局後にAI解析機能も利用できます。
「将棋クエスト」も人気のオンライン対局アプリですが、持ち時間設定が幅広く長考の将棋も指せるのが特徴です。レーティングシステムで実力が数値化され、上級者も多くプレイしています。
スマホアプリは基本無料で試せるものが多いので、いくつかインストールしてみて自分に合うものを選ぶとよいでしょう。
専用機(電子将棋)
パソコンやスマホではなく、電子ゲーム専用機としての将棋も根強い人気があります。実際の駒や盤に近い感覚で対局が楽しめる点が魅力です。
「チャンピオン電気将棋」は盤面にLEDで指し手が表示され、駒を動かしながらCPUと対局できます。級位者~アマ初段程度まで対応しており、ヒント機能や待った機能も搭載されています。
「名人コーチ 将棋」は初心者向けの電子将棋で、駒の動き方が書いてあるスタディ将棋の要素と、コンピュータ対局を組み合わせたものです。音声で指導してくれる機能も付いています。
専用機を選ぶ際は、棋力(レベル設定の幅)と操作性、そして盤駒の大きさをチェックしましょう。強さについては商品によってまちまちですが、初心者~中級者が楽しむには十分なレベルを備えています。
実物の駒を指す感覚が味わえるのが電子将棋の最大の利点です。画面越しではなく自分の手で駒を動かすので、集中力も増し本番さながらの気分になれます。ご年配の方など、デジタル画面が苦手な場合にもおすすめです。
まとめ
将棋ソフトは自分の棋力や目的に合わせて選ぶことで、最大限に活用できます。初心者には解説機能と段階的な難易度設定、中級者には棋譜解析と実戦的な対局環境、上級者には高度な研究機能が重要です。
初心者が将棋ソフトを選ぶ際は、ルールや基本戦術をわかりやすく解説してくれるものを重視しましょう。「ぴよ将棋」や「銀星将棋DX」などは、入門から楽しめる機能が充実しています。
中級者は自分の弱点を分析し、それを克服するための機能があるソフトを選ぶとよいでしょう。「激指」シリーズなどは棋譜解析や棋力診断機能が充実しており、効率的な上達をサポートしてくれます。
上級者には「ShogiGUI」や「将棋所」に強豪エンジンを組み合わせた環境がおすすめです。詳細な評価値や読み筋表示、大規模な定跡データベースなど、研究に役立つ高度な機能を活用できます。
プラットフォームに関しては、PCでじっくり研究したい方はWindows向けソフト、手軽に楽しみたい方はスマホアプリ、実際の駒を動かしたい方は電子将棋が向いています。最近は一つのソフトを複数のデバイスで利用できるクロスプラットフォーム対応のサービスも増えているので、生活スタイルに合わせて選択肢を広げるとよいでしょう。
将棋ソフトは単なる対局相手ではなく、学習ツールであり研究パートナーでもあります。ぜひ自分に合ったソフトを見つけて、楽しみながら将棋の腕を磨いていきましょう。強いAIとの対局や解析を通して、新たな発見や気づきがあなたの将棋ライフを豊かにしてくれるはずです。